あるお寿司屋さんの話。

用事があり、

久しぶりに錦に行きました。三丁目。

 

ちょっと前に、

私が通っていたお鮨屋さんが閉まっていたんです。

確か、夏頃です。

かなりショックでした。

 

それから数日後に、当店にお越しくださっているお客様で

同じく、その鮨屋に通っておられるお客様が

タイミングよく閉店前に行かれたそうで、教えてくださいました。

 

「社長が飛んだらしいよ。」

 

もちろん、社長の背中に羽が生えて飛ぶことができたわけではありません。

 

夜逃げ同然で会社をたたんで、逃げた。

と、

事情を教えてくださいました。

 

まあ、よくある話です。

私もそういう人、知っています。

 

そのお店で雇われていた大将はどうされてるのかな。

と、気になっていったんですが、

先日、そのお寿司屋が、

店の名前と電話番号を変えて

9月に再オープンしたんだと教えてくださいました。
それで今日、行って来たんです。
カウンターがメインのいわゆる、ああいうお鮨屋さんです。

お鮨をいただきながら

年の頃は60代前後の大将と話していました。
「大変だったでしょ?もう落ち着いたんですか?」

「そらもう、大変でしたよ。いきなりのことでしたからねえ、最初はお客さんに嘘をついて営業してたんです」

とおっしゃったんです。
ある日突然、会社が倒産していて社長と連絡がつかない。

でも、任されたお店のこともある。

なにより、予約の入っているお客様がいるから、迷惑はかけられない。

だから、なんとか手持ちの現金で魚を仕入れて

支払われることもない自分の給料のことは後回しにして、

バイトの方の給料を優先して支給し、ギリギリのところで

なんとかやりくりしてその日その日を凌いで来た。と、そのような話でした。

 

会社が倒産しますとね、

そのお店でクレジットカードが使えなくなるんですが、

場所が錦ということもあり、

そのお店を利用する多くのお客さんがクレジットカード決済のお客様なんですね。

 

最初は、自分の事を大将として雇ってくれていた社長が夜逃げしたなんて、

本当に情けなく感じておられたようでお客さんに

本当のことが言えず、「端末機械の故障で」と

嘘を言って、現金で支払ってもらうようにしていたそうです。
でも、クレジットカードが使えないとなると、

そのお店から客足が遠のいていきました。
すぐに現金が回らなくなって、

もうダメだ。本当のことを言うことにしよう。と

常連のお客さんに事情を丁寧に話したんだそうです。

 

すると、その事情を知った常連のお客さんが

「そういうことなら」と、今まで週一で通ってくれていたのが、

週に2回も来てくれるようになったり、

他のお客さんも紹介してくれることが急激に増えたそうです。

  

そしてお店はめでたく復活。

   

とはなりません。現実は酷です。

   

今度は、会社が倒産したために電話が繋がらなくなったそうです。

もちろん解約という形で、それまでの電話番号は使えなくなり、

予約すら受けることができなくなった。

ここまで来たらもうダメだ。あきらめるしかない。

  

大将はお店を特別贔屓にしてくださっているお客さまに

兎に角、番号がわかる人だけにでも、と、順に、

その旨を自らの電話で

なんとかここまでお店をやってこれたけど、

これ以上、お店を続けることはできなくなってしまいました、本当に申し訳ありませんと、

お詫びしていったそうです。

    

そして順にかけていった電話の中で

ある上得意のお客様に事情を話してお詫びをいれたところ、

  

「自分が(お金を)出すから、大将、やりなよ。」と、

そのお店の権利を丸ごと買い取ってオーナーになってくれる方が現れました。
   

さらに、

大将の腕や人柄を見込んで、「あんたの好きにやればいい」と、

お店の名前や電話番号を一新して、

ようやく先日、再オープンできた。という凄絶なお話を聞きました。

  

リアルに「捨てる神あれば拾う神あり」のお話ですが、

「こうやって営業続けられて、お客様に残念な思いさせなくてほんとに良かったです」

と、大将はおっしゃっていました。

 

その大将、いま、

お店に泊まり込みで働いています。

新たにつくった名刺を渡されました。

「これ、私の携帯です、いつもだいたいここにいます、いつでも出ますのでお越しの際は、何時でも電話ください」

と、手書きで

おそらく私用の携帯電話の番号を書いて手渡してくれました。

  

窮地を救ってくれた新しいオーナーとなってくれたお客様に、なんとしても報いたい。

そういう決意の表れだと思います。 

お寿司の方は、正直、

若干、味が落ちたなと感じました。 

 

今までの仕入先も支払いが滞って仕入れられなくなったんだと察しました、

そしてそれ以上に

おそらく、寝ていない為です。

こちらの大将は、一所懸命にお店を盛り立てようとされています。

今まで

全て社長任せで、経営のことなどは何もわからない職人一筋でやってきたけれども、

これからは、全て自分の責任と腹を決めて

お店を救ってくれたお客様へ報いようと取り組んでおられるのだな。

というのが伺えました。

 私は、これからもこのお店に通います。

 

私も、自分でお店の経営を持ったころ、

同じような感じだったのを思い出しました。

無我夢中というか、

今考えれば我武者羅やって無茶しとったなあ。と、懐しく思います。

なので、

「若い頃に戻りたいか?」と問われたら

私は迷わずノーサンキューです。

経営上の失敗も数知れずあります。

まあ、恥ずかしながら、今でもよくありますけれども。

 
 

よく錦に行かれる方、奇跡体験アンビリーバボーなこのお店、

実際に行って話を聞いてみたいと思われた方、直接私まで聞いてください。

ご紹介します。

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